20101111
鉄割アルバトロスケット『鉄割のアルバトロスが 京都編』
Category:ライブ演劇
京都国際舞台芸術
KYOTO EXPERIMENT 2010
公式プログラム
鉄割アルバトロスケット(東京)
『鉄割のアルバトロスが 京都編』
【日時】
11/11(Thu) 19:30★
11/12(Fri) 19:30
11/13(Sat) 19:30
11/14(Sun)15:00-
ポストトーク
★11/11(Thu) 21:00
ゲスト=松田正隆(マレビトの会)
※鉄割アルバトロスケットのポストトークは、ギャラリーPARCで行います。
【上演時間】
90min
【料金・チケット】
一般/前売 3,000円
一般/当日 3,500円
ユース・学生/前売・当日 2,500円
高校生以下/前売・当日 1,000円
チケット申し込み
【お問い合わせ】
KYOTO EXPERIMENT事務局(平日 11:00?20:00)
〒604-8156 京都市中京区室町通蛸薬師下る山伏山町546-2 京都芸術センター内
TEL: 075-213-5839 / FAX: 075-213-5849
E-mail: info@kyoto-ex.jp
【スタッフ】
作:戌井昭人/演出・照明:牛嶋みさを/音響:松島さとみ
【出演】
戌井昭人、奥村勲、中島朋人、中島のりつぐ、村上陽 一、内倉憲ニ、マークス雅楽子、伊藤麻実子、小林成男、木村秀次郎
製作:鉄割アルバトロスケット/助成:公益財団法人セゾン文化財団/提携:ART COMPLEX 1928/主催: KYOTO EXPERIMENT
【関連イベント】
10/31(Sun)
フェスティバル茶会
戌井昭人×いしいしんじ
【主宰者コメント】
京都では今まで何度か公演したことがありまして、学園祭や音楽イベントに出演したり、京都大学吉田寮の食堂で公演したりしてきました。そして、京都での公演で、いつも感じるのは、なんだか自分等が、おおらかな気持ちになれるということで、これは街の雰囲気がそうさせるのだと思うのです。
自分等の団体は、じっくり、つめて、なにかを、創っていくのではなく、その場に、影響され、あえて流されていこうという心持ちがありまして、ムラがあるのも確かなのですが、常に不安定な状態でありたいとも願っています。
それは、生な感じを大切にしたいということなのですが、この生な感じは、世の中の流れと全く関係ない、自分達が今そこにいるというだけのことで、時代性も、新しさも求めていません。
ですから新鮮でなくても構わないのですが、生でありたいとは常に思っています。食える生でなくてもいい、腐りかけでも生ならいいのです。もちろん、腐りかけが旨いんだ、なんてことも言いません。ただそこにある生でありたいのです。
今回、KYOTO EXPERIMENTに参加させていただくにあたっては、実験結果ではなく、実験途中の、生の珍奇な実験を行いたいと思います。どうぞよろしくおねがいします。
(戌井昭人)
[劇評]
ほとんど瞬間芸的に終わる短いものから、五分くらい続くある程度まとまった話まで、数十のコントというかネタというか、種々雑多な出し物が次々くり出されていくスタイルの劇団。どっと笑いを呼ぶネタもあれば、それほどでないものもある。じわじわ巧みに引っぱっていって、最後で一気にに盛り上げるとかいった計算がなされているわけでもなさそうだ。おしまいは唐突に、全員がネギで殴りあったりする。
「音楽とか入るんですか?」ー「んー、ときどき全然チューニングしてないギター出してくるくらいかな」。「踊ったりは?」ー「踊り・・・・・・えーと、1人だけ筋肉異様に鍛えてるのがいて、上半身裸でぷるぷるさせたりして、けっこう女の子に受けてるけど」。「じゃあ、ギャグが過激で危ないとか?」ー「てゆうか、もうちょっといい加減っていうか、外し気味っていうのかなあ・・・・・・」。「あ、いまふうの脱力感というか、ユルいところがいいんだ?」ー「いやぁ、案外妙なところで気合い入ったりしてるよ」。「諷刺とか、社会批判とか、そういう要素は?」ー「薬にしたくてもないね」。「あの、柴田さん」ー「はいはい」。「その人たち、どこがいいわけですか?」ー「うん、だからね、どこがいいとか、あの、そういうことじゃなくてさ・・・・・・」
要するに、すべてにおいて中途半端な集団なのである。だが、その中途半端ぶりは決して中途半端でない。絶対に気高くあるまい、見事であるまい、芸術的であるまい、かつそれらのアンチ(反芸術、等々)でもあるまい、という意志において鉄割アルバトロスケットは徹底している。彼らには似合わない腐れインテリ的な言い方をするなら、「方法化された中途半端」。見ていて不思議と開放感を覚えるのは、そうした徹底ぶりの潔さゆえにちがいない。
鉄割を見ていて人が笑うとき、その笑いはつねに、失笑すれすれである。だってそうだろう。ネギで殴りあってる奴らを見て、そりゃおかしいから笑うよ、笑うけどさ、笑ってるうちに「あいつらひょっとしたらただの阿呆じゃないのか」という問いがよぎらないとしたらそりゃやっぱり馬鹿だし、「それを笑ってる俺も阿呆かなぁ」という問いも湧かないとしたら救いがたい馬鹿ですよそれは。
だがむろん、笑いがつねに失笑すれすれであることにこそ、この劇団の味がある。高尚へも前衛へも飛ぼうとせず、失笑すれすれの地点にどこまでもとどまって、しかし失笑ではない笑いをもぎ取ることに、この劇団は賭けている。
柴田元幸 掲載誌: 『それは私です』(新書館刊)内のエッセイ「鉄割アルバトロスケット」より 2008年5月10日
[書評] 戌井昭人「まずいスープ」
日常、普通、堅気、勤労、常識。表題作で活躍するのは、そんな人生の鉄路から、がくんとはずれた家族である。
(中略)しかし、おたがいのやりとりにすさんだ空気はない。
(中略)語り手が言うように、この家族の関係は意外にバランスがいいのである。小説は、暗い貧乏物語にも、べたついた人情噺(にんじょうばなし)にも向かわず、乾いた雰囲気のままとどまっている。
(中略)表通りからは見えないところで、ほのかに甘い空気が滞留しているような、奇妙に安定した世界。表題作は、この世界に小さな危機が訪れ、それを克服するまでの物語として読めるだろう。
苅部直(東京大教授・日本政治思想史)
『朝日新聞』2009年11月22日
戌井昭人
プロフィール
1971年東京生まれ。玉川大学文学部芸術学科演劇専攻卒業後、劇団「文学座」を経た後、1997年に牛嶋みさをと共にパフォーマンス集団「鉄割アルバトロスケット」を結成。劇作・出演を担当する。一公演につき、1 ?5分からなる演目約50本を矢継ぎ早に繰り出すパフォーマンス集団。演目は、寸劇・歌・踊りなど多様に無関係な様式で混ざり合い、古典落語・浪花節・ロックンロール・パンク・文学・映画・食い物等々、ごった煮の要素を織り交ぜ、感覚をアウトフォーカスしつつ、『そこはかとない無常観・無意味状態のルール・高尚な曖昧・理不尽な感動・完成された不自然・間の抜けた刺激・感動的な阿呆らしさ』が自然に出てくる内容になっている。「第10回ガーディアンガーデン演劇フェスティバル」(2000年)では大賞を受賞。また小説『まずいスープ』(新潮社刊/第141回芥川賞候補)など、作家活動も行っている。
公演歴
1997
『四畳半オアシスロケット』( 作:戌井昭人/ 演出:牛嶋みさを)
根津宮永会館/ 東京
2000
『鉄割ガーディアンガーデン』(作:戌井昭人/演出:牛嶋みさを)
ガーディアンガーデン演劇フェスティバル/ 東京
2003
『鉄割エンナーレ』 (作:戌井昭人/演出:牛嶋みさを)
越後妻有アートトリエンナーレ/ 新潟
2004
『WWツアー』(作:戌井昭人/演出:牛嶋みさを)
京都大学吉田寮学食/ 京都
2006
『高みからボラをのぞいてる』(作:戌井昭人/演出:牛嶋みさを)
こまばアゴラ劇場/ 東京
2008
『鉄割のアルバトロスが』(作:戌井昭人/演出:牛嶋みさを)
下北沢ザ・スズナリ/ 東京
2009
『鉄割の赤青黄』 (作:戌井昭人/演出:牛嶋みさを)
原宿リトルモア地下/東京
2009
『鉄割のアルバトロ助』(作:戌井昭人/演出:牛嶋みさを)
下北沢ザ・スズナリ/東京