小原啓渡執筆集「諸行無常日記」

2007.01.06

インド

「い」で始まる言葉で思い浮かんだのが、やはり「命」です。
昨年のクリスマスに幼なじみの同級生が亡くなり、色々考えました。
命への思いも含め、今回は敢て「インド」でいきたいと思います。

インドはある意味、僕の原点です。
大学を中退してインドに渡ったのは1982年、もうかなり昔です。

全てを捨てる覚悟で国外脱出した先がなぜインドだったのか?

いくつかの理由が折り重なった中で、藤原新也さんの撮った一枚の写真がありました。
ガンジス川岸で野犬が人間の死体を食らっている写真です。
(彼の著書「メメントモリ」で見ることができます)
僕がこの写真を目にしたのは、今は無き「フォーカス」の創刊号でした。

写真の右上に「人は犬に食われるほど自由だ」と書かれてありました。
当時の僕にとっては、かなりの衝撃でした。

インドに強い興味を覚えました。

当面の衣服と手持ちのお金以外すべての所持品を処分し、誰にも言わずに向った現実のインドは、まさに「混沌」でした。

何もかも、生も死も、美も醜も、善も悪も、貧も富も、あらゆる相対する要素がなんのベールも掛けられず、そのまま混在している世界がそこにありました。

そんなインドを約1年にわたり放浪しました。

「人は犬に食われるほど自由だ」

この言葉が言わんとする「自由」を、僕はインドで学んだのだと思います。

小原啓渡

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