小原啓渡執筆集「諸行無常日記」

2008.01.07

ナント市

今回は「な」、昨年視察に行ったフランス西部、ロワール川河畔に位置する「ナント市」に関して。

「文化による都市再生」の成功例として知られているナント市は、市長の強力なリーダーシップのもと、長年「創造都市戦略」を推し進め、現在ではフランスで最も住みやすい街に選出されるまでになった。

その象徴的な事例として注目されているのが、旧ビスケット工場を現代アートセンターにリノベートした
「ル・リュー・ユニック」
ここを視察するのがナント市訪問の主な目的でした。

2004年から大阪の木津川河畔の旧造船所跡地をアートスペース(クリエイティブセンター大阪)として再生する活動を続けている私にとって、「リュー・ユニック」は世界の先行事例として、非常に魅力的でした。

事業規模に関しては「リュー・ユニック」が地方自治体と国から年間6億円ほどの補助金をもらっているのに対し、C.C.O(クリエイティブセンター大阪)は残念ながら公的な補助金はゼロですから、全く比較になりませんが、「廃虚化した近代産業遺産を文化芸術という切り口で再生し、都市の活性化に生かしていく」という活動のコンセプトは同じです。

「リュー・ユニック」には、劇場やギャラリーはもちろん、レストランや書店も入っており、複合的な文化施設として市民に開放されています。

先日行ったシンガポールの「セントジェームス・パワーステーション」(旧発電所をライブハウスやクラブ、レストランにリノベートした複合施設)がかなり商業化していたのに対し、さすがフランスと言うべきか、「リュー・ユニック」にはアート感覚が随所に香りたっていて、歴史の堆積を感じさせる重厚感がありました。

一方C.C.Oも造船所当時の雰囲気を残すかたちでの改装を重ねており、まだ立ち上がって3年程度ですが、昨年末にはライブハウスとレジデンスもオープンし、何とか「リュー・ユニック」に追いつけ追い越せと頑張っています。
http://www.namura.cc/

みなさん、応援してくださいね!

小原啓渡

PAGE TOP