小原啓渡執筆集「諸行無常日記」
2008.01.09
ヌーボー・シルク
今、大好きな歌舞伎(初春大歌舞伎・松竹座)を見てきたので、今回見た演目に関して書きたいところですが、今日は「ぬ」、せめて歌舞伎から連想できる(僕だけかもしれませんが・・)「ヌーボー・シルク」(新しいサーカス)に関して。
歌舞伎とヌーボー・シルク、一見何の関連もなさそうですが、僕の中では大きな共通点があるんです。
キーワードは「コンプレックス」つまり「複合」です。
歌舞伎は、ご存じのように芝居、舞踊、浄瑠璃や常磐津などの唄、「けれん」と言われる宙乗りなどのアクロバティックなものまで取り込んだ複合的な演出で知られていますが、ヌーボーシルクも、伝統的なサーカスをベースに、ダンスや演劇、現代美術、最近ではスポーツなどの要素まで取り込んだコンプレックスアートです。
日本でヌーボーシルクといえば、カナダを本拠地とする世界最大の「シルク・ド・ソレイユ」は有名ですが、発祥の地といわれるフランスだけでなく、現在では世界各国で、芸術的な演出を特徴とするものから、エンターテイメント性に特化したものまで、様々なタイプのカンパニーが活動をしています。
私が初めてヌーボーシルクに出会ったのは、1996年コペンハーゲンでのこと。
今や伝説的な存在となっている「ク・シルク」という3人がパフォーマンスを行う、芸術性を追求するタイプのカンパニーでした。
その斬新な表現と、深い哲学を感じさせる彼らの濃厚な世界観から受けた衝撃は今でも忘れることが出来ません。
以来、機会のあるごとに、世界各国でヌーボーシルクを見てきました。
そんな中で、3年前、ラスベガスで見たシルクドソレイユの「KA」は、エンターテイメント性に特化したタイプとしては、極致と思わせる作品でした。
実は最近、この両極に位置する2つの作品を超えるものに中々出会えない状態が続いており、ヌーボーシルク自体に対する興味が少し薄れています。(一昨年モントリオールでみた「セブンフィンガーズ」の新作はよかったですが・・)
究極と思えるものに出会うことは、幸せでもあり、ある意味で、不幸なことなのかもしれませんね・・・・
小原啓渡
※今までに見た作品に関して(一部ですが)書いた文章がありますので、ヌーボーシルクに興味のある方は是非以下のURL覗いてみてください。
https://www.artcomplex.net/text_archives/n/