小原啓渡執筆集「諸行無常日記」

2008.01.19

無意味

「む」、ですね。「無意味」という言葉。

「僕は僕の無意味を追求したいんです」

高瀬泰司という作家が「いのちの洗濯」という彼の著書の裏表紙に書いて、僕にくれた言葉です。

学生運動が世を揺るがした時代、そのリーダー格として名を馳せた彼がやっていた小さな酒場がありました。
京都、吉田山その中腹にポツンと一軒。

僕が学生の頃、アングラの世界に足を踏み入れた店です。
彼が亡くなるまでの数年、毎日のように通い、それ以後は一度も行かなかった「白樺」
客は、著名なデザイナーやミュージシャン、舞踏家、政治家まで、高瀬泰司を慕う強烈な個性をもった人たちばかりでした。

「無意味を追求する」
今なお、心に残り、時に思い出しては、また消えていく言葉です。

「意味」を明確にしなければ、「無意味」は曖昧模糊となる。
「無意味を追求する」とは、「意味」を知ることなのかもしれない。
あるいは、意味を明確にする行為自体が「無意味」である、という意味なのかもしれない。

「高瀬泰司」と「アングラ」、そして、「無意味」
僕にとって、捉えきれない、捉えることを拒絶する言葉です。

小原啓渡

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