小原啓渡執筆集「諸行無常日記」
2008.01.29
レンブラント
「れ」、迷わず「レンブラント」
レンブラントは、17世紀を代表するオランダの画家です。
光のとらえ方、扱い方が彼の作品の大きな特徴で、その繊細かつドラマチックな技法から「光の画家」あるいは「光の魔術師」とも呼ばれています。
曲がりなりにも、舞台照明の技術者としてこの業界に入った僕にとっては、「光」とは何なのかという哲学的な命題も含め、避けては通れないアーティストの一人でした。
照明の仕事が、技術からデザインへ移行していった時期、レンブラントをこの目で見たくて、オランダに行きました。
目指すは、レンブラントの作品を最も多く所蔵している
「アムステルダム国立美術館」
ネオ・ルネサンス様式の荘厳な建物の入り口を入って突き当たり、いきなり、「夜警」(ちなみに作品の名前)が迎えてくれます。
「デカイ!!!」
その大きさは4M×3Mをゆうに超えていたと思いますが、壁一面、圧倒的な迫力です。
それまでに何度も画集などでは見ていましたが、所詮は大判のブックサイズ。
そして、「青年期の自画像」へ
「小さい!!!」
実物は、僕がみた画集より感覚的にずっと小さかった。(15CM角くらい)
何だかサイズばかりに驚いていて、ほかに感想ないの?って言われそうですが、僕にとっては第一印象として、かなりのショックでした。
それ以前、歌舞伎を初めてテレビ中継でみた時に感じた「なさけなさ」というか「白々しさ」は、本物をリアルタイムに見た後の話でしたし、絵画においても、ルーブルで実物の「モナリザ」を見た経験などもありましたが、その時はそれほど驚いたという記憶がありません。
これは、この2つの作品のサイズがあまりにも違っていた(ネズミと象くらい)にもかかわらず、画集ではほぼ同じサイズで載っていたという理由と、やはり作品に対する僕の思い入れの違いからだろうとは思います。
まあ、それにしても、まさに「目からうろこ」的な経験でした。
そんなわけで、2日目は、あえて先に図録を買って、その図録に載っている写真と本物を見比べてみることにしました。
これまた、ビックリ!
かなり精巧な印刷技術を使っているとは思いましたが、色が全然(僕的には)違います。
そして何より「質感」
もう、お話になりませんでした。
また、熱や紫外線などによる劣化を防ぐため外光をシャットアウトしている美術館が多い中、アムステルダム国立美術館は自然光で作品が見えるようにできています。
3日目は、一日中館内で過ごし、朝見る絵と夕方の光の中で見る絵が違うことも、実感として知ることができました。
「本物とは何なのか?」
「本物を知るとはどういうことなのか?」
僕にとってレンブラントは、その意味を垣間見せてくれた画家なんです。
小原啓渡