小原啓渡執筆集「諸行無常日記」
2008.02.02
インターネット
「い」、「インターネット」で。
アートコンプレックス1928をオープンさせるために、約半年、準備に費やしました。
ホールの改装がそれくらいかかった訳ですが、その間、1928ビルの4階、3畳弱の物置を事務所にしていました。
その部屋は、階段から屋上に出る手前で、屋上側の壁を抜いて窓にしたので、それほど圧迫感はなかったのですが、さすがに机と資料棚を置いて、お客様用に小さなソファーを置くと、もういっぱい!
晴れた日は、外に出て、屋上に置いたテーブルで打ち合せができたので問題もなく、レトロビルの屋上はそれなりに洒落ているので、お客さんにも好評でした。
しかし、雨の日ともなると、大変!というより異様な感じ。
お客さんと文字通り、膝を突き合わせての打ち合わせになります。
それも座れるのは一人だけ、あとの人たちは入口の扉を開けっ放しにして、階段の踊り場に立っててもらうより仕様がない。
実はこんな感じが嫌いじゃなくて、あえて近くの喫茶店とかには行かずにこれで通しました。
勝手に「日本一小さな株式会社」と名乗って、話のネタにしていましたが、当時のお客さん(特に立って打ち合せをした人達)にはご迷惑をお掛けしました!すみません!
で、なんで「インターネット」かというと、1928ビルのオーナーであり、建築家であり、プロダクトデザイナー(関空特急「ラピート」は彼のデザイン)であり、僕のビジネスパートナーでもある若林宏幸さんとこの極狭の部屋で、インターネットをめぐって、ある実験をやったことを、よく思い出すからです。
僕はその頃、ちょっとイチびって、新しもの好きでインターネットを引き、検索機能なども使っていましたが、若林さんはインターネットやコンピューターに関してかなり懐疑的でした。(社会全体がそんな感じでした)
「タウンページとコンピューターどっちが早いか、競争しよう!」
と若林さんが言い出しました。
僕がヤフーの検索機能を使い、若林さんは分厚いイエローエージを持って、ヨーィ、ドン!
当時は、ネット回線のスピードが遅く、検索できるデータ量も少なかっただろうし、コンピューター自体の性能も今と比べて段違い、っていうこともありますが、何度やってもイエローページの勝ち。
なぜ、この事を印象的に思い出すのか?
つまりは、インターネットの普及とその影響が近年あまりにも絶大だからでしょう。
アートコンプレックス1928は、1999年の12月にオープンしたので、約9年前のことです。
約10年前に、今のインターネットに纏わる現状を予測するのは確かに難しかったと思います。
現在、若林さんの事務所はもちろん、ほとんどの設計事務所は「キャド」を使っています。
今やコンピューターなしで仕事をしろと言われたら、お手上げです。
「タウンページとグーグル、どっちが早い?」
今の時代には、聞けない話です。
小原啓渡