小原啓渡執筆集「諸行無常日記」
2008.02.13
サロン
「さ」、「サロン」で。
大阪の福島で「サロン&バー・アートコンプレックス」というお店ををやってました。いわゆる「プライベートサロン」ってやつで、表に看板もない、隠れ家的なバーでした。
お客さんは、知り合いが知り合いを連れてくるという連鎖で、文化芸術に関係する方がほとんどでしたね。
今は、「AC Depth」という名で、京都のFMで人気DJだった友人の「よしみなおみ」が切り盛りしてくれてますが、最初の1年間は僕がカウンターに入って、一人でバーテンダーをやりました。(もちろん、昼間も通常の仕事してましたよ)
もともと、大阪に事務所が必要になって借りた2階建の物件でしたが、仕事的には2階だけで十分、1階は広めの会議室か、みんなでパーティーとかできるスペースにしようと考えていました。
そんな時に知り合ったのが店舗デザイナーの森田恭通(もりたやすみち)さん。
昨年、大地真央さんと結婚されて、いきなり有名人になりましたが、当時から、すでに建築やインテリア業界では「世界を股にかけて活躍するするデザイナー」としてかなり著名でした。
森田さんの気さくな雰囲気と独特なセンスが大好きで、何度目かに会った時に、ほぼ冗談で
「プライベートサロンをやりたいんですけど、森田さんデザインしてくれません?」 と言うと、
「いいですよ!」 (あっけない程の即答)
困ったのは僕の方でした!?
ちょうどその頃、森田さんが抱えている物件が海外も含めて20件を超えていて、超多忙であることは知ってましたし、そもそも物件の規模が違います。
(NYのトランプタワーのレストランが完成して話題になっていた頃で、その時はロンドンのWホテルの仕事をされてました)
適当に流されて終わり、と予測していただけに、
「むっちゃ、狭いっすよ!」
「やるのなら、すぐやりたいので時間ないっすよ!」
「お金もあんまり無いっすよ!」
あわてて、自分から否定的要素を羅列する始末・・・
それも意に介さない感じで、森田さん、いつものシャンパン「モエ」を飲みながら、
「入口を入って全体が一望できる空間って結構難しいんですよ、ごまかしが利かないからデザイナーの力量が試されるんです、久々にやってみたいなぁ、一緒に創りましょうよ、条件はなんとかなるでしょう・・・」
ノックアウト?!!!(僕は笑いながらリングに沈みました)
(大地真央もきっとこんな感じだったんだろうなぁ?)
こうして、全くの素人バーテンダーが一人で悪戦苦闘する、
とってもおしゃれなサロンがオープンしたのでした。
小原啓渡