小原啓渡執筆集「諸行無常日記」
2008.02.22
徳
「と」、今日は東京にいるので、「東京」といきたいところですが、時間の関係上今日は短く、「徳」で。
僕は幼少時代、人に授けられて育ち、高校・大学と下宿をして通ったので、両親と一緒に暮らした時間が少なく、あまり思い出もありませんが、母から教わったいくつかの教訓は、今も大切にしています。
母は親だといって僕を子供扱いしたり、むげに叱ったり、言い諭すようなことがほとんどない人でした。
そんな、母が唯一、事あるごとに口にしていたのが、
「損して、トクとれ」ということばでした。
しかも、この「トク」は一般的に言われる「得」ではなく「徳」でした。
説教めいたことをほとんど言わない人が、たまに言うと心に残るんですね。
「損して、徳とれ」
「得」したって思うようなことは、所詮大したことでない。
どうせすぐに消えてなくなる。
でも、「徳」はずっと残る・・・
おそらく、この「徳」は「人徳」ってことなんだろうと思いますが、
誰に対しても謙虚で、公平で、浅ましさのない母に比べ、
僕はどうなんだろうと思ってしまいます。
「損得勘定」だけで物事を判断していないか?
「せこい」人間じゃないか?
いつもチェックしていないと、流されてしまいます。
唯一といっていい、母が僕に望んだ規範・・・
母に対する感謝の証として、いつまでもずっと心に持ち続けたいと思っています。
小原啓渡