小原啓渡執筆集「諸行無常日記」

2008.04.10

エンタメ

「え」、「エンタメ」で。

「エンタメ」とは「エンターテイメント」の略語ですね。

以前から「エンタメ」か「アート(純粋芸術)」か、といった議論がありますが、
僕の考えではこの比較基準って、
「私と仕事とどっちが大切なの?」というのとよく似ている気がします。

つまり、「右か左か」ではなく、「右か上か」みたいな感じ。

「エンターテイメント」に対しては、「ディスエンターテイメント」あるいは「ノンエンターテイメント」(こんな英語はないと思いますが・・・)、
「純粋芸術」に対しては、「不純芸術」(こんな日本語はないと思いますが・・)が、本来対比されるべきものだと思います。

エンターテイメントとは一般的に「人を楽しませるもの」ということですから、
「人は何を楽しいと思うか」をまず規定しなければ、無数の抽象言語と同様に誤解を招くことになります。

バイオレンス映画を見て楽しい人もいれば、忌々しいという人もいる。
アニメを見て楽しいという人もいれば、くだらないという人もいる。
列車の時刻表を見てるのが何より楽しいという人もいれば(実際僕の友達にいます)、そんなもん見てて何が楽しいねん、という人もいる。

つまり、エンターテイメントであるかどうかは全く個人的な問題で、ジャンルとしてくくるためには、「エンターテイメント性」が一般的にみて「高いか低いか」(それを楽しいと思う人が多いか少ないか)という相対的な判断をする以外にないという事になります。

「純粋芸術」に関しても同じことで、芸術とは何かという規定ももちろん必要ですが、「芸術性」が「高いか低いか」という問題なのだと思います。

つまり、何が言いたいかというと、例えば演劇を批評する場合、「エンターテイメント性」と「芸術性」を別々に考えるべきではないかということです。

そうなると、
「エンターテイメント性は低いけど、芸術性は高いよね」
「エンターテイメント性は高いけど、芸術性は低いよね」
「エンターテイメント性も低いし、芸術性も低いよね」
「エンターテイメント性も高いし、芸術性も高いよね」と、大きく4つに分かれてくることになります。

そこで、目指すべきところはどこかとなると、やはり、
「エンターテイメント性も高く、芸術性も高い」ということになるのではないでしょうか?

「エンターテイメント性と芸術性は相容れない」と思われる方がいるなら、それはあまりに作品を見ていないと言わざるを得ません。

つい先日、びわこホールで「ピナ・バウシュ」の「フルムーン」という公演を見ましたが、これも両要素を兼ね備えた作品でしたし、実際のところ、世界的に評価されているアート作品の大半は高いエンターテイメント性(人を楽しませる要素)を持っているといって問題はないと思います。

「創造活動はすべてプロセスである」といっても過言ではないでしょう。
そういう意味でも、より高いレベル、より高い理想を追い求める姿勢を持ち続けることが大切なのではないでしょうか?

小原啓渡

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