小原啓渡執筆集「諸行無常日記」
2008.06.04
すっぽん
「す」、「すっぽん」で。
「すっぽん」といっても、亀ではなくて、歌舞伎用語の「すっぽん」
「すっぽん」とは、花道上の七三(舞台から三分、揚幕から七分)にある「切り穴」のことで、歌舞伎の世界では、この世のものでない妖怪などが出没するという約束事のもとで演出に使われます。
現代では電動の昇降装置が用いられていますが、現存する最古の歌舞伎小屋、四国こんぴらの「金丸座」など江戸時代の歌舞伎小屋では、役者を板に乗せて神輿のように持ち上げて登場させていました。
(金丸座は一般の方でも見学できたと思います)
すっぽんを使う演目で印象深いのは、「義経千本桜」(四の切)の狐に姿を変えた忠信、「千代萩」のねずみに化けていた仁木弾正ですね。
ところで、なぜ「すっぽん」と言うようになったのかを歌舞伎関係の先輩に聞いたことがありますが、「切り穴からセリ上がってくる役者の姿が、亀の首が出てくるのに似てるやろ、だからや」と言われましたが、真偽のほどは・・・・。
とにかく、歌舞伎好きの僕としては、是非みなさんにも、もっと歌舞伎を観て欲しいのであります。
上記「千本桜」も「千代萩」も自信を持ってお勧めできる作品です。
「千代萩」では、幼い主君を守るために我が子を犠牲にした乳母(政岡)の「クドキ」(女形が三味線や竹本の語りにのって様式的な動きで心情を表現すること)のシーンは、何度見ても泣いてしまいます。
いやぁ、歌舞伎って、ほんとうに面白いのです。
小原啓渡