小原啓渡執筆集「諸行無常日記」

2008.09.08

ぬくもり

「ぬ」、ですね、「ぬ」で始まる言葉って少ないですよね。今回は、「ぬくもり」で。

確か尾崎豊の歌詞に、「100円玉で買えるぬくもり、熱い缶コーヒー握りしめ・・・」というのがありました。
この歌詞を聞いた時、尾崎豊の非凡さを感じ取ったことを憶えています。

孤独感や疎外感、冷え切った心が感じとる優しさなども含めて、「ぬくもり」はやはり肌寒い季節が似合う言葉かもしれません。

夏に熱い缶コーヒーを飲む人が少ないように、「ぬくもり」って、自分が元気な時には気付かないことが多い。それどころかウザく感じる時さえある。
さみしい時だけ、その存在に気づくものなのかもしれませんね。

毎日多くの人とお会いして話す機会が多い僕には、「さみしさ」を感じる隙間がないようなところもありますが、今では基本的に人間って孤独なものだという認識があるので、孤独にさいなまれるということは少なくなりました。

ただ、哲学者の「三木清」が自分の通っていた高校(兵庫県立龍野高校)の卒業生ということもあって読んだ「哲学ノート」には、「孤独は山にはなく、むしろ町にある」というようなことが書かれてあって、人の中で感じる孤独感についてずいぶん思い悩んだ時期もあります。

孤独は思索の源でもあるし、創造の大きなエネルギーともなります。

「100円で買えるぬくもり」さえ求めた尾崎豊の孤独感が、彼の創作の原点であったのかもしれません。

小原啓渡

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