小原啓渡執筆集「諸行無常日記」
2008.09.09
値段
「ね」、「値段」で。
値段をつけるという作業は、本当に難しいと思います。
経費がこれだけだから利益を乗せて売値はこれ、といった単純な話ではなく、「費用対価値」という問題もありますから、「値段」を決定するには非常に複雑な収支計算とマーケットに対する「読み」が必要になってきます。
「値ごろ感」という言葉がありますが、これを最大まで引き上げて「お得感」を消費者に提供する「薄利多売」といった方法論や、一品ものに高い付加価値をつけて利幅を増やす方法など、経済学的な視点はもちろん、消費者心理を読み解く心理学や投資などに関連する経営学に至るまで、適正な「値段」を決定するには様々な知識と情報が必要です。
特に一般的に広く流通している物品と異なり、ベンチャー企業の株価や私のフィールドであるアート作品となると、投機的な意図がはたらくことも多く、まさに混沌としてきます。
僕は経済学を専門的に勉強したわけではありませんが、実際に公演やイベントの価格を決定しなければならないことがあるので、ついつい深く考えてしまいます。
自分が値段をつけなければならない場合、つねに観客の立場に立った「値ごろ感」に敏感でなければならないと思っていて、
職業柄様々な公演の招待券をいただくことが多いのですが、基本的に入場料を払って見るようにしています。(特に収支が厳しいだろうと推測できる公演)
やはり身銭を切って見なければ、その値段に見合った価値があるかどうかの判断、つまり「値ごろ感」が鈍感になってしまうと思うからです。
消費者心理というのは、本当に微妙だと思います。
ほんの5パーセント値段を高く付けたがために全く売れなかった商品や、敢えて高く値段を設定したことでブランド力を高めた商品など、値段によって明暗が分かれた事例は星の数ほどあるにちがいありません。
いっそ「値段学・価格学」という学問ができてもいくらいだと僕は思うのですが・・・・。
小原啓渡
ちなみに、明日10日から18日まで、海外出張(スペイン)に出かけます。
そのため、ひょっとするとこのブログ1週間ばかりお休みになるかもしれません。