小原啓渡執筆集「諸行無常日記」

2008.11.06

封印切

「ふ」、「封印切」で。

僕が大好きな歌舞伎の演目に「封印切」があります。

はたして今まで何度観たか、自分が仕事で一カ月公演に揚幕で付いたのが5回としても約150回、若手に仕事を引き継いだ後も「封印切」が演目にあがる時は客としても見に行きますし、照明係をしていた頃も含めるとひょっとすると300回以上観ているかも知れません。
(封印切は人気の演目なので、一年に1回くらいは関西でも上演されます)

歌舞伎の仕事をしている裏方の中でも、舞台側にいるスタッフは演目を前からは観れませんが、僕は最初照明係で、その後「揚幕」(花道の幕を開閉する係)をやっていたので、常に客席側から舞台を見ていて、基本的に目を離すことはできません。つまり、通しで完璧に観ていることになります。

そして驚くべきことは、それほど観ても、全く飽きない。
それどころか自分でもおかしいんじゃないかと思うくらい、毎回泣いてしまいます。

もちろん映画などと違って、ライブですから毎回役者の出来が異なり、公演が変わると配役も変わりますから、その変化を見るだけでも面白いのですが、何といっても近松門左衛門の本がいい。
「曽根崎心中」「心中天の網島」と並ぶ3大傑作の一つですが、僕は「封印切」が一番好きです。

配役でいうと、優劣はつけがたいですが、主役の亀屋忠兵衛が片岡仁左衛門、遊女・梅川が片岡秀太郎、八右衛門が片岡我當という松島屋の三兄弟。

仁左衛門さんが孝夫さんの時からずっと見ていますし、秀太郎さんが演じる女形役の中でも梅川はベスト、我當さんの八右衛門に到っては他の誰がこの役をやっても僕は満足できないくらい素晴らしいです。

「封印切」のストーリーに関しては、以下のURLを見ていただければいいと思いますが、
http://homepage2.nifty.com/hay/meido.html
とにかく一度観ていただければ、きっとその面白さが分かって頂けると思います。

ぜひ、歌舞伎に足を運んでみてください。

小原啓渡

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