小原啓渡執筆集「諸行無常日記」

2008.11.09

マンネリ

「ま」、「マンネリ」で。

「マンネリ」とは「マンネリズム」という英語を簡略した造語ですが、一般的にマイナスのイメージで用いることが多い言葉です。

ただ、僕の場合はアートに関連する話として、「マンネリを怖れるな」とか、「マンネリが世界観をつくる」とか、プラスの意味合いで使うことの方が多い。

時には「マンネリ」であることさえ気づかない、諦めと怠惰が支配する「マンネリ」と、敢えて「マンネリ」であることにこだわり続ける「マンネリ」
つまり、逃避的な「マンネリ」と、挑戦的な「マンネリ」があると思っています。

この二つの違いは大きい。

挑戦的、革新的な気質を持った人にとっては特に、「マンネリ」は耐えがたい苦痛となります。
常に新しく新鮮なものに惹かれ、別の可能性に目を奪われる傾向も強い。

若手のアーティストに多いのが、「スクラップ・アンド・ビルド」という概念を単純に理解して、とにかく既存のものを破壊しなければ新しいものは生まれない、と壊し続けるタイプ。

たしかに、「スクラップ・アンド・ビルド」は創造に関して重要な概念ですが、そればかりを続けていては独自の世界観を構築することは難しい。

完全な「スクラップ・アンド・ビルド」の時期は大切だと思いますが、どこかの時点で潔く他の可能性を捨て、一つの核を選択する必要があると思います。
その後にやってくるのが「マンネリ」です。

この「マンネリ」に耐えかねて、構築しかけた自身のオリジナリティーを自ら壊してしまう人、「マンネリ」を耐えて、さらに深く掘り下げていく人。

ここに大きな分れ道があるような気がします。

小原啓渡

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