小原啓渡執筆集「諸行無常日記」
2008.12.20
ディア・ビーコン
「て」、「ディア・ビーコン」で。
ニューヨークからハドソン川沿いを電車で約1時間半の場所、ビーコン市に2003年、巨大な美術館が生まれました。
ナビスコ社のビスケット梱包工場をリノベートした現代美術館です。
軽工業が衰退した小さな町に500億円といわれる資金がつぎ込まれオープンした「ディア・ビーコン」の「DIA」とは、「貫き通す」という意味、巨大な空間に恒久的に展示されているのは、わずか二十数名の「貫き通した」作家の作品、セラをはじめマイケルハイザーなどミニマリズムやランドアートの粋を集めています。
工場のノコギリ型屋根から入る自然光で作品を見せているために、冬季の閉館時間は日没が始まるころ、4時と早いのですが、天候や日差しの具合によって作品が様々な表情を見せ、何時間いても飽きることがありません。
実際、ビルバオのグッケンハイム美術館で見たセラと「ディア・ビーコン」のセラを見比べるだけで、美術にとっての光の重要性を実感することができます。
フランス、ナント市の「リュイ・ユニック」、そして「ディア・ビーコン」は近代工業遺産をリノベートしたアートスペースとして、自分が手がけている大阪名村造船所跡地(クリエイティブセンター大阪)の理想形でもあると思っています。
ニューヨークに行かれた際は、ぜひ足を伸ばしてみてください。
小原啓渡