ロングラン公演を終えて

 この2月「電視游戯科学舘」のロングラン公演を企画、主催した。10日間の仕込期間と3週間に渡 る26公演を行った。ロングランといえば公演期間の長さが注目されるが、私にとっては仕込み、稽古期間を十分にとるという事が重要事項だった。作品の完成 度を高め、ひいては全体のクオリティーを高めることが、舞台作品をより多くの方々に楽しんで頂くための重要な要素であると思ったからだ。
 「静かな演劇」からスペクタクルまで、演劇には様々な作品がある。作り手のコンセプト、演劇に対する考え方、あるいは才能は別にしても、料金を取って作 品を見せる限りは、少なくとも完成度の高いものを提示すべきであり、妥協にまみれた、未完成な作品を発表することは演劇人口を減少させる要因になるとさえ 思われる。
 「電視游戯科学舘」は10日間の仕込期間、仮眠を取りながらの24時間作業で9日間の徹夜作業を敢行した。作業を中止した1日は安全性や効率を考慮し て、私が強制的に帰宅させたものだ。とにかく彼らの「より良いものを作りたい」とするこだわりには改めて脱帽する思いだった。
 客席も含め、ホール全体を劇空間に仕上げた舞台美術や大仕掛けを用いた演出等、出来上がった作品に対する評価は、内容の賛否両論は当然としても「小劇場 でここまでやれば大したものだ」という意見が大半だった。
 動員も1週を過ぎる頃にはほぼ満員となり、3週目には連日入場できないお客さんが出る程になった。総動員数は1650名、京都の小劇団としては記録的と いえるだろう。裏方も含め電視游戯科学舘全てのスタッフのこだわりが、観客に伝わったのだと理解したい。
 短期の公演と違い、ロングランにはいい評判を聞いたお客さんが観に来れる期間的余裕、あるいは役者も含めて作品が熟成していくというメリットはあるが、 経済的なリスク等もかなり大きい。しかし、そのリスクによって作り手は必然的に「いい加減なものは出せない」という意識がより強くなり、その意識が作品の クオリティーを上げる要因の一つになればと思う。
 アートコンプレックス1928は今後も、より良い形でロングラン企画を続けていきたいと思っている。ひいてはブロードウェイのように舞台芸術が一つの投 資対象となり、たとえ小劇場であっても確かな経済効果を生むようなシステムが実現できないものかと日々考えを巡らせている。
 読者の方々の御意見、アイデア等も是非お聞きしたい。

P.A.N.通信 Vol.38に掲載

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