OMS閉館に寄せて
先日、OMS(扇町ミュージアムスクエア)が2002年12月をもって閉館する事が発表された。
建て替えられるビルの中にも新しい劇場はできないという。関西小劇場において、演劇シーンを引っ張ってきたOMSの閉館は、私たち劇場関係者のみならず、
文化的活動に関わる多くの人々に少なからぬショックを与えたと思われる。私自身、小屋を運営していることもあるが、どうにも釈然としない文化施設の在り方
と経済との関係について一言述べたい。
OMSの場合、運営会社が閉館に踏み切った要因に、深刻化する経済不況がある事は容易に推測できる。しかし反面、不況がある種の大義名分になっている事
も事実だろう。バブル経済がはじけた直後の文化状況と同じく「この不況では、企業が赤字部署を切り捨てざるを得ないのも仕方がない」と誰もが納得してしま
う部分がある。
企業にとって、文化に貢献しているというイメージは、ある種の広告となり、間接的な利益ともなるが、不況時には無駄なものとしてまっ先に削減の対象とな
る。確かにこれは経済の論理から考えると間違っているとは言い難い。
問題なのは「なぜ、文化部門の大半が赤字なのか?」という事だろう。文化部門、施設が利益を生み出す、少なくとも赤字を出さない運営を行う事ができれ
ば、問題は解決するはずだ。もちろんこれまでにも色々な試みがなされても、なお、有効な方策が見つからないでいる根の深い問題である事は重々承知してい
る。しかし「文化芸術に関わる仕事は儲からなくて当たり前」、これがある種の常識となってはびこり、文化関係者の中で、ある種の言い訳になっている気がし
てならない。つまり、この通念からスタートしてしまうと、たとえ革新的な方策が出て来たとしても、実現するまでのエネルギーを維持できない気がするのだ。
「仕方ない、そういうもんだから・・」とにかくこうした諦めの考えをまず払拭する事から始めるべきだ。「文化芸術は社会に根ざし、経済とも密接に結びつ
いて経済効果を生む」そう信じて、文化芸術活動が経済的に自立できる方法と社会のシステム(例えば、組織のNPO化や公演が投資の対象となるようなシステ
ム等)を本気で考え、全力をあげて取り組むべきだろう。
OMS閉館の発表にあたり、これまでOMSが行ってきた数々の功績に称賛の意を表すると共に、まだ残されているだろう新OMS立ち上げの可能性、あるい
はスタッフのその後の展開に心から期待し、エールを送りたいと思う。
P.A.N.通信 Vol.39に掲載
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