第2回ロングラン公演を終えて
アートコンプレックス1928では、昨年2月に続き、今年4〜5月にかけて劇場主催のロングラン公演を行った。ロングランといっても実際は3週間(26
公演)、公演日数が事前に定められた長めの公演という事であって、ブロードウェイ等で成立している本格的なシステムにはほど遠い。
昨年は劇団との協力体勢で試み、1650名の動員を得て、なんとか持ち出しをしないという意味でのペイラインを達成できた。2度目の今回は昨年と同じ公
演数に設定し、昨年の動員に達することができれば、出資していただいたお金は全額返却するという「セーフティーネットとしてのメセナ」というシステムを打
ち出し、出資を呼び掛けた。あくまで自力でやる事を基本に、赤字になった場合にのみメセナをお願いするという形だが、最終的には約50名の方々から御協力
を得る事が出来た。
出資していただいたお金は、小屋入り前の大道具、小道具、衣装やチラシ等、通常なら事前の持ち出しによってしか賄えない経費に当てさせて頂いたが、実際
これは予想以上の効果を挙げた。製作物のクオリティーが上がった事はもちろんだが、多くの方々に出資をして頂いた事が、作者をはじめ役者やスタッフにいい
意味でのプレッシャーを与え、昨年以上の意気込みがみなぎっていたように思う。
今年の最終動員数は1938名、昨年の動員を300名近く上回り、出資金は全額お返しできる結果となった。出資頂いた方々のほぼ全員が実際に観に来ら
れ、終演後は一様に興奮された面持ちだった。単なる観客としてではなく、自分自身がこの公演に参加した感覚を持たれたが故ではないかと思う。
ロングラン公演には、現在の舞台制作環境が抱える問題を打開する多くの可能性が含まれている。例えば、通常2,3日の公演ではその評判が伝わる頃には既
に公演が終了しており、新しい観客の獲得に繋がりにくいという現状を改善する効果、役者、スタッフのスキル向上を促進させるばかりでなく、作品自体を成熟
させる効果などが挙げられる。十分な仕込み期間と公演日数、経済的な採算制、舞台関係者が自立した生活を送ることを可能にするロングラン公演、そしてそれ
を支える「エンジェルシステム」が今、必要なのだと確信している。
アートコンプレックス1928は、この秋、ビジュアルパフォーマンス集団「キュピキュピ」によるロングラン公演を、証券会社との連携で証券化する予定
だ。将来的には、より本格的なエンジェルシステムを定着させる事ができればと考えている。いつか京都にブロードウェイのような劇場群を創りたい。これが私
の夢である。
P.A.N.通信 Vol.45に掲載
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