「キュピキュピ」ロングラン公演を終えて

 京都のパフォーマンス集団「キュピキュピ」による、約3週間のロングラン公演が無事終了した。アートコンプレックス1928が主催したロングラン公演 は、2002年2月と2003年4月の「電視游戲科学舘」に続いて今回で3度目となる。1度目は自力で、2度目は「セーフティーネットとしてのメセナ」と いう新しいメセナの形を考案して行ない、今回は証券会社との提携で、ファンドを用いた「公演の証券化」を実現した。
 インターネットを用いて募集した1口2万円、100口のファンドは、マスコミ各社に記事として取り上げて頂いた事が大きかったと思うが、3週間足らずで 完売し、観客動員数も損益分岐点を上回って、今回の公演に投資頂いた出資者の方々に12%の配当を出す事が出来た。規模こそ小さいが、舞台公演をファンド 化して収益を出し、配当を行なった成功例は日本では初めてではないかと思われる。
 成功の要因を自分なりに検証すると、キュピキュピの創り出した作品が、多くの人々に支持される素晴らしい内容であった事は言うまでもないが、このシステ ムを実現するために過去2回、段階を踏んでステップアップしてきたことが、証券会社や出資者、あるいは出演者の劇場に対する信頼につながり、心情的な部分 も含めて理想的な協力体勢で公演に集中できた事が大きかったと思う。この場を借りて、この公演に協力頂いた全ての方々に心から感謝したい。
 今後もアートコンプレックス1928は、規模的にリスクの少ない小劇場であるからこそ可能な挑戦的な試みを、意欲的に続けていきたいと思う。
 また、今回の小さな成功が前例となって、ファンドによる文化事業の支援が少しでも広がりを見せてくれればと願うと同時に、投資家が舞台公演に出資し、収 益が上がれば配当を受けるこの「エンジェルシステム」の定着化に向けて、より良い形を模できる機会を増やし、文化芸術が一つの産業として地域に経済効果を もたらすことが可能となる「京都にブロードウェーのような劇場群をつくる」という夢のような大目標を見据えて、公演の証券化にとどまらず、「ファンドで新 しい劇場をつくる」等、さらにステップアップした企画の具体化も進めていきたいと考えている。皆さんの御理解と御賛同を心から願います。
有難うございました。

P.A.N.通信 Vol.48に掲載

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