アーティストインタビュー
今井雅之(俳優・脚本、演出家)


今井雅之 プロフィール
1961年兵庫県生まれ。86年奈良橋陽子演出「MONKEY」で舞台デビュー、翌年にはテレビデビューを果たす。
 自ら中心となって結成されたエルカンパニーがプロデュースする「THE WINDS OF GOD」で91年文化庁主催芸術祭において史上初の原作・脚本・演技の3役で受賞、93年には国際連合作家協会芸術祭を受賞する。
 映画界においても95年日本アカデミー賞優秀助演男優賞を受賞するなどテレビ・映画・舞台・小説など様々な分野で活躍中。


「創造とは何か」をテーマに、様々なジャンルで活躍されているアーティストの方々にお話を伺っています。
今回は『THE WINDS OF GOD』で文化庁主催芸術祭において史上初の原作・脚本・演技の3役で受賞された今井雅之さんにお話を伺いました。 

小原
 単刀直入にお伺いしますが、あなたにとって創造とは何でしょうか?

今井
 僕の場合、モノを創るときに一番必要なものは『これをやりたい』、まずそれが無いと駄目なんです、そしてそこからエンターテイメントにしていかなくちゃ いけない。その上で僕はとにかく自分が楽しみたい、やる以上はね。自分が楽しいことをやって飯が食っていければこんな最高なことは無い、それしかないです ね。
     たまたま創った物が大衆に受け入れられたらそれは『ヒット』と言うし、はずれたら『コケタ』って言う訳ですが、僕の場合はとにかく『やりたい、コレやり たい』、テーマが意外とはっきりしているんです。

小原
 オリジナリティーに関してお聞かせ下さい。

今井
 僕、創っても絶対ワクワクしないと駄目なんです。例えば「こういうの創ってくれますか?」って言われても興味がなかったら良い物は創れない。そりゃあ仕 事としては勿論書きますよ、でも物真似の作品じゃなくって、自分が『これやりたい』、そこがもうオリジナルですよね、そしてクリエイティブですよね。本書 いてても楽しくなってくるし、やっていく度にイマジネーションがどんどん出てくる。それが結果としてクリエイティブになってくる。只ヒットするかしないか は僕は知らないです。
 まぁ『ウインズ・オブ・ゴット』は成功はしましたけど、演劇界には認められていないけどね。でも結果全国ツアーで3万人位動員して、それを3〜4年位、 そういう意味では成功したかもしれないけど、僕の中ではお客さんが楽しんでくれればそれで良いし、しかもそれで飯が食っていければ良いんです。

小原
 脚本家としては「こういう物が書きたい」って突き詰めていけますよね、只、役者さんの立場ですと既成の役を割り振られる場合がほとんどだと思うのです が…?

今井
 例えば、この間アメリカの有名な作品をやったんです。既成の台本というのは素晴しいんです、素晴しいんですけど壊せないんです。ところがオリジナルって いうのは自分が作ってるから壊せるもんなんです。自分が作家だから状況によって壊していけるんですよ。そういう意味で僕はオリジナルを今後もやっていきた いし、勿論規制のバシバシ固まった中で俳優としてセリフを言っていくのも必要ですけど、クリエイティブというならば、やっぱり壊してクリエイティブにして いきたい、単なる猿まねにはしたくない。
 『ウィンズ・オブ・ゴット』とかは、どんどん壊す人が出てきて、それで壊しすぎて、とことんいったら終わるんだけどオリジナルなんで文句言う作家もいな いし、これが一つの作品でもあるわけだし、俳優が変わったら変わったで、また内容が変っていくわけですよ。
 アメリカやヨーロッパを真似た作品は出したくないですね。やっぱりオリジナルでやってるからこそ誰も文句言えないし、作品がつまんないって言われる分に は引き受けますが、演出する分には、とことん自分の感覚にこだわる事がやっぱりクリエイティブっていうか創造っていうか、この時代に合ったオリジナリ ティーの面白さだって思う。
 創造って言うのはそういう事だと思うから、やっぱり僕は演劇でたとえ客が来なくてもオリジナリティーの創造って言うのにこだわっていきたい。そりゃ有名 な作品もってくりゃ客は来ますけどね、やっぱりそこら辺はこだわって。
 何度もブロードウェイに行って感じた事なんだけど、何で俺がブロードウェイに行ってブロードウェイの作品やらなくちゃいけないの?って。そこに自分の作 品もって行ったらブロードウェイも認めてくれるはずだし。僕はイミテーションはクリエイティブとは思ってないから。そういう意味ではブロードウェイに行っ て凄く勉強になった。

小原
 今後の活動方針をお聞かせ下さい。

今井
 僕は日本人にこだわったクリエイティブをやっていきたいですね。だってしょうがない、日本のコテコテの田舎で育ったんだからさ、これを活かしたクリエイ ティブをやっていきたいし、またそれを壊す、自分で創って壊していきたいし俳優達にも壊してもらいたい。

小原
 本日は有り難うございました。オリエンタル劇場での公演『MAKOTO』楽しみにしています。


P.A.N.通信 Vol.42 掲載

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