アーティストインタビュー
花嵐 (舞踏グループ)

花嵐 プロフィール
1998年結成。古川遠、ニイユミコ、伴戸チカコの3人が共同で振付けを行う。
即興を基本とした緊張感ある表現と舞踏をベースにした身体が特徴。ダンスとは身体への冒険と捉え、声や言葉などの要素を自在に盛り込んだ舞台は、既成の枠 にとらわれない独自の表現として評価が高い。
「ポップ舞踏」と評される。主な作品「果肉03」、「カミダラケ」(音楽家との共同作品)「妄想きかん車」。

「創造とは何か」をテーマに、様々なジャンルで活躍されているアーティストの方々にお話を伺っています。
今回は、即興を基本とし、年一回の自主公演のほか、ギャラリーや美術館、カフェなどさまざまな空間で美術・写真家、音楽家とのコラボレーションも積極的に 行う舞踏グループ・花嵐の3人にお話を伺いました。

小原
 結成以来ずっと三人で創造活動をされているわけですが、それぞれ創造に関してどういった価値観や考え方を持ち、それがどういう形で一つの作品に仕上がっ ていくのか興味があります。まず伴戸さんにとって、"創造"とは何でしょうか?

伴戸
 私にとって想像とは"人間の能力を開発する"ということですね。
 人間の身体は、何の為にあるのか考えると、それは多分、生活するだけの為にあるのではなくて、もっと大きな力を生むためにあると思うんですね。それを 探っていくことが私にとっての創造活動なのかな。

小原
 では、古川さんにとってはどうでしょうか?

古川
 創造とは、"人間として全的に存在する為にあるもの"だと思うんです。私は現実をもっとより深く感じたいと思っていて、でもそうするには、日常から離れ て非日常な所に行かないとそう出来ないと思うんです。
 おそらく日常っていうのは、自分の意識の中から出てないと思うんですね。でも非日常っていうのは意識の中から出て、もっと自分を超えた所に行くっていう ことだと思うんです。

小原
 日常から離れて非日常な所に自分を持って行くことによって、新しい自分の発見があったり自分の全体像が見えてきたりする。そういう意味での全的な存在と いう事でしょうか?

古川
 そうですね。人間として存在するっていうことは何なのかを考えると、自分として存在するというのを越えてもっと大きな意味を考えなければ人間としての存 在を考えられないと思うんです。

小原
 なるほど。ではニイさんはいかがでしょうか?

ニイ
 舞台の上では、観に来た人やその空間に普通に出会っているっていうのとはまた違う出会い方をするんじゃないかと思っているんですね。
 私にとって、歌ったり、踊ったり、絵を描いたり、モノを創ったりしている人って、周りの空気が全然違うんですよ。
 造形教室で教えていた事があるんですけど、その時、子供たちがモノを創っている周りの空気がすごく動いている感じがして、そういう空気に触れるとすごく 自分が豊かになる感じがするんですね。
 だから、舞台の上という日常とは違うレベルで、すごく観ている人がドキドキするような豊かになる空気を創りたいと思っているんです。

小原
 なるほど。では微妙に違う考えを持った三人が、共同で創作活動をすることにおいて大切にしていることはありますか?

伴戸
 それぞれが持っている感覚っていうのを大事にしていますね。
 最初に『花嵐』を結成する時に、三人がそれぞれを理解し合うっていうことがまずあったんです。お互いの考えや身体を知って、それぞれの理解が深まれば深 まる程『花嵐』っていう表現が大きく出来ていくのではないかなぁと。

小原
 作品を創るにあたって、やはり三人それぞれの役割みたいな物はあるんでしょうか?

伴戸
 そうですね。結成してから五年目になるけど、段々役割分担も出てきたかなって。  新作に関しては、私がコンセプトメーキングというか下敷きになるような言葉をまず創って、ニイが実際の動きに変換していく。そして古川が演出というか全 体の動きを付けていく。そういうように折り重なるように出来上がっていく感じですね。

小原
 『花嵐』としての作品創りに共通するテーマというものはあるのでしょうか?

伴戸
 究極的にはいつも"愛"がテーマになる。"愛"を実現したいと思っているんです。
 フィリップ・ジャンティが「人間は生まれてからこのかたずっと絶えず戦争している。愛を実現したことがない」って言っていて、求めて手に入るようなもの ではないんですね。
 舞踏では、自我を消して初めて見えてくるものがあるんです。愛が何なのかまだよく分からないですけど、そこに重要な繋がりがあると思っています。

P.A.N.通信 Vol.57 掲載

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