ヌーボーシルク見聞録 vol.3
ニュ−ヨークのリンカーンセンターが毎年行なっている夏のフェスティバルは実績・クオリティー共に世界的に定評がある。今年のメインプログラムはフラン
スのヌーボーシルク「シルク・プリュム」だった。
公演に招待して頂いたという理由もあるが、他にN.Yのオフ・ブロードウェイの状況を視察するという名目もあって、二週間ばかりN.Yに滞在し、十数演
目のパフォーマンスを観てきた。残念ながら「シルク・プリュム」の初日にパフォーマー2人が怪我をするという事故が起こり、公演が延期となって、結局滞在
中に観る事は出来無かった。
ただ、ヌーボー・シルクが「人間の身体能力の極限を表現するパフォーマンス」である限り、稽古・本番に関わらず常に身体的危険が隣接するという事を考え
ると、こういった事故は可能性として決して少ないとは言えず、ある意味プロデューサーとしての興行リスクに対する良い経験ができたと諦めをつけた。
ただ、オフ・ブロードウェイの新しい流れを十分に感じ取ってくる事が出来たというのは、今回の収穫といえる。
そんな中でもブエノスアイレス出身のカンパニー「デ・ラ・クアーダ」はかなり強烈なパフォーマンスだった。エラスティックスというヌーボーシルクの一芸
(体をゴムで吊るす空中芸)を使った観客巻き込み形の空中パフォーマンスで、3年近く連日ソールドアウトのロングランを続けている。全く新しい形のパ
フォーマンスで、ジャンルをもって説明する事も、何々の様な、という形容もできない。とにかく「サーカス、音楽、ダンス、美術のカオス的融合」という以
外、内容をつぶさに描写する事でしか説明の仕様の無いパフォーマンスだ。
N.Yに行く予定のある方には、是非是非、お勧めしたい。
P.A.N.通信 Vol.35に掲載
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